日本は世界でも有数の高齢化社会となり、自動車の運転者層にも大きな変化が見られます。
特に70歳以上の高齢ドライバーが増える中で、近年はニュースで「アクセルとブレーキの踏み間違い事故」や「交差点での衝突事故」が取り上げられることが多くなっています。
こうした状況を背景に、自動車メーカーはさまざまな「先進安全装置」を備えた車を開発・販売しており、高齢者がより安全にカーライフを続けるためには、どのような装備がある車を選ぶのかが大変重要になっています。
本記事では、高齢ドライバーに特に役立つ安全装置の特徴や選び方のポイントを、プロの修理工場目線も交えながら徹底解説していきます。
目次
なぜ高齢ドライバーには安全装置付き車が必要なのか
まず大前提として、高齢になれば誰にでも身体機能や認知機能に変化が訪れます。
決して「注意力が足りない」という話ではなく、加齢に伴う自然な変化として、以下のような傾向が現れるのです。

- 反応速度の低下(ブレーキを踏むまでに時間がかかる)
- 遠近感や視野の狭まり(歩行者や自転車の見落としリスク増加)
- 認知判断の遅れ(複雑な交差点で迷いやすい)
- 身体機能の衰え(振り向きやペダル操作がスムーズにできない)
こうした影響は、長年無事故で運転してきたベテランドライバーであっても少なからず現れます。
そのため「愛車の性能」に頼ることで弱点を補う、という考え方が非常に重要なのです。
高齢ドライバー向けに注目すべき安全装置とは?
自動車メーカー各社は「先進安全技術(先進運転支援システム)」を搭載した車を積極的に広めています。
その中でも特に高齢ドライバーにとって役立つ装備を詳しく見ていきましょう。
1. 自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)
前方に歩行者や車両がいると、ドライバーのブレーキ操作が遅れた場合でも自動でブレーキをかけるシステムです。
特に「前方不注意」や「信号無視への気づき遅れ」の場面で大きな助けになります。
2. ペダル踏み間違い時加速制御
駐車場などでアクセルとブレーキを間違えて急発進してしまう事故を防ぐための機能です。
前方や後方に障害物がある場合、誤ってアクセルを踏んでもエンジン出力を制御し急発進を防ぎます。

3. 車線逸脱警報・車線維持支援
車線をはみ出そうとしたときに音や振動で警告してくれる機能です。
さらに進化したシステムでは、自動でハンドルを補正して車線内に留めてくれます。
長時間の運転や夜間走行時に特に心強い装備です。
4. 認知支援機能(標識認識・前方カメラ)
制限速度や一時停止などの交通標識をカメラが読み取ってメーターに表示してくれる機能です。
道路標識の見落としが減少し、安心感が増します。
5. 全周囲カメラ・駐車支援システム
高齢ドライバーからよく聞かれる悩みが「駐車の難しさ」です。
車を上から見下ろした映像を表示できる全周囲カメラや、自動で駐車してくれるシステムは、安全装置の中でも特に人気があります。
車選びのポイント:安全装置があるだけでは不十分
大切なのは「どのように安全装置を活かせるか」です。
単に安全機能が多ければよい、というわけではなく、自分の運転環境や身体能力に合わせて選ぶことが重要です。
1. 使用環境に合った装備か
- 都市部や住宅街を中心に運転するなら「歩行者検知機能付き自動ブレーキ」
人の往来が多い、住宅街で人が飛び出してくる可能性があるといった場合は「歩行者検知機能」が付いた自動ブレーキを選ぶべきでしょう。 - 踏み間違いが怖い方は「誤発信防止」「踏み間違い時加速制御」
ニュースで最も多く取り上げられている事故は踏み間違いです。
加速制御機能で踏み間違い時の加速を抑え、被害を軽減します。 - 高速道路の利用が多いなら「車線維持支援」や「アダプティブクルーズコントロール」
特に車線維持支援は必須です。車線の中央を走るように維持してくれる機能もあります。 - 駐車が苦手な方なら「全周囲カメラ」
自宅駐車場以外の民間駐車場によく停める方にもおすすめです。
2. 操作が直感的であるか
ボタンや画面の設定が複雑だと、逆に混乱を招くこともあります。
高齢ドライバーにとっては「シンプルでわかりやすい操作性」が大きな判断材料になります。

また、納車時に安全装備について丁寧に説明を受け、設定がONの状態になっていることを確認することも重要です。
3. メンテナンス性も考慮する
安全装置はカメラやセンサーに依存しているため、板金修理やフロントガラス交換の際に「エーミング作業(センサーの校正)」が必要になります。修理できる工場かどうかも購入時に確認しておくべきです。
4.機能をオフにしない
安全装備のための警報(車線逸脱時の警報など)が煩わしくて機能をオフにしている、というお話を耳にします。
警報が鳴るということは、それだけ「危険な運転」をしているということです。
警報を煩わしいと感じる場合は、機能をオフにするのではなく、警報が鳴らないような運転を心がけましょう。
実際に人気の高齢者向け安全装備搭載車
近年の国内市場では、軽自動車から普通車まで安全装置が標準化されつつあります。その中で、高齢ドライバーに特に支持されている車種には以下のようなものがあります。
- ホンダ N-BOX(軽自動車でも先進安全技術「Honda SENSING」を搭載)
- トヨタ ヤリス(小型車でも高性能自動ブレーキとレーンアシスト標準搭載)
- スバル インプレッサ・フォレスター(高度な「アイサイト」システムで有名)
- ダイハツ タント(踏み間違い加速抑制機能と全周囲モニターが魅力)
各メーカーが似たような安全装備を備えていますが、細かい点で違いがありますので、説明を受けて判断することが大事です。

「細かな機能の違いを理解する」ことは困難なため、自分がどんな運転をしているか、何が苦手なのか、どのような不安があるのかを伝えた上で、それを補う機能が備わっているのかを確認すると良いでしょう。
板金工場が伝えたい安全装置との付き合い方
我々板金工場の立場で言えることは、「安全装置は万能ではない」ということです。多くの事故を防ぐ助けになる一方で、誤作動やセンサーの汚れによる機能低下もあり得ます。
また、万が一事故をした場合もセンサーを搭載する部分(バンパーやガラス)は精密修理や再調整が必要になるため、修理費用は従来より高額になる傾向があります。
つまり、
- 安全装置は「運転を補助するもの」であり、過信しない
- 定期的に車検や点検でセンサー状態を確認する
- 修理依頼時は「エーミング対応工場」であるかを確認する
といった注意点を心に留めておく必要があります。
まとめ
高齢ドライバーにとって安全装置付きの車は、安心してカーライフを続けるための大きな味方です。自動ブレーキや踏み間違い防止機能、車線維持支援などは事故を未然に防ぐ可能性を大きく高めてくれます。

しかし「どの車を選ぶか」だけでなく、「どのように安全装置を正しく使うか」も同じくらい大切です。
まだまだ元気に運転を楽しみたい方こそ、自分に合った安全装置付きの車を選び、日々の点検や整備を怠らずに過ごしましょう。
そうすることで、愛車と共により長く、安全で快適なカーライフを続けることができます。
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車選びのアドバイスも致しますので、お悩みがあればお気軽にご相談ください。